フリーキャスター 佐藤 のりゆき
第2回 『試される』から『立ち上がる』大地へ

 ロンドンで発行されている経済雑誌(The Economist)が北海道の記事を載せた。欧米の雑誌に日本の地方に関する記事が載ることはめずらしいという。今回の記事は「甘やかされてきた辺境の地」というタイトルでかなり厳しい内容だ。東京駐在の特派員が“小泉政権の地方切り捨ての実例”ということで、駆け足で取材したらしい。公共事業など、国への依存で生きてきた北海道は今後どうなる?ということなのだ。
 このことについて私のラジオ番組でゲストに迎えた北海道大学の濱田康行教授は、「北海道拓殖銀行の破綻以来、ひどい目にあっている北海道の真実を書いてもらうことは、多いに歓迎。今後は北海道が世界に発信させる機会を増やさなければならない。そして次の機会までに甘やかされた坊やから、自立した青年になっていることが課題である。」と述べた。公共事業が減った分を「観光」と「農業」で頑張らなければならないというのが大方の見方のようだ。
 仲間が数名集まった時、まぜ北海道がダメなのかという話になった。特に今年のように大雪で雪山に囲まれた私達の生活は、心も押しつぶされる様な思いである。経済が上昇しないのは、御上に「お金を下さい!」と頭を下げ両手を差し出し、自立しようとして来なかった今までの報いだ、と厳しいことを言う仲間もいる。実際、身の回りでも、「こりゃダメだ」と感じることが数多くある。銀行の窓口で客が何人も待っているのを知りながら、平然とクローズの札を出し、昼食に出かけてしまう行員に唖然!となるし(銀行もダメになるわけだ)、テレビ、ラジオ番組のプレゼントで現金が当たり、「何に使うの?」と尋ねると、ほとんどの人が「おいしい物を食べたい」と答える。「本を買いたい」とか「いいコンサートや映画、ミュージカルを観たい」と答える人は皆無である。「二〇〇六年春に復活!」と大見出しになった演劇専用劇場の構想も暗礁に乗り上げた格好になり、いつ出来るかわからない。東京から来た人に北海道は文化レベルが低いとまで言われてしまった。
 そういえば、以前「北海道のセールスマンは一度断ったらもう二度と来ない。諦めが早いわ。」と苦笑した関西の女性社長がいたことを思い出した。
 でも北海道は美味しいものが多い。国内外を問わず旅をして帰って来ると「北海道の食が一番旨い」と思う。それ故、現金が当たったら「食べたい」と思うのも北海道ならでは、なのかもしれない。
 公共事業が減り、GDPが減る分を北海道が世界に誇る農業、食文化で頑張る、と言うのはもちろん正しいだろう。しかし、それだけではなく、道民一人一人の知的好奇心が高まり、経済的にも文化芸術面においても、自立した青年として生きていける様になってほしい・・・と、北海道をこよなく愛する私は、日々思うのである。